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呆然とソファに寄り掛かって目線を落とす……畳んだ、スプリングコートが目に入った。
薄いピンクのコート……これを着て、サークルのお花見に行って……確かに、お酒は飲んだけど……。
ぎくりとして顔を上げる。
彼女が着ているのは、分厚いセーター。窓の外を歩いている人たちもダウンコートを着て、寒そうに首元を押さえている……。
私だけ……季節が……止まってる……。
「……じゃあ……ほんとに、そうなんだ……」
赤川さんは黙って、カップのお茶かなにかを啜った。
匂いも感じないから、それが紅茶なのかコーヒーなのかも私にはわからなかった。
「……どうして、赤川さんは……その……私が……?」
「亡くなった小田島さんが見えるのかって? ――私が小学生のころ、いじめられてたのと理由は同じだよ」
――あいつ、霊感があるってマジで言ってんだけど!
――キモっ! かまってちゃん、うざーい。
あぁ、そういうことか……。
忘れていた……忘れようとしていた当時のことが、生々しく蘇る。
子供だからこその、手加減のない悪意だった。
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