最後のお礼

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 ぜひ会いたいと、連絡が来たのはメールだった。  今どき、友達からの連絡はSNSがほとんどだから、興味を引かれた。  逆に……メールでなければ他のメッセージに埋もれて、気づかなかったかも知れない。 『小田島さん  お久しぶりです。赤川里美です。  小学校で5、6年生のときに同じクラスでした。覚えていますか?  突然の連絡で驚かせていたらごめんなさい。  ぜひお会いしたいです』  元同級生とは思えない堅苦しい文面のあとに、近くのファミレスと日時が指定されていた。  赤川……。  小学校5、6年生なら、10年は前になる。  たっぷり時間をかけないと、その存在はなかなか頭に思い浮かばなかった。  じわじわと、炙り出しのようにその姿が滲んできた。  ――そうそう。いじめられていた子だ。  大人にばれにくいような、陰湿ないじめを受けていた。  親が厳しいらしく、不登校になることは許されなかったようで、ほとんど休まずに登校して来ていた。  この世の終わりのような顔で、足を引きずりながら廊下を歩いていた様子しか思い出せない。  なんで、いじめられていたんだろう?
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