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彼女の懐かしそうな微笑みを見ていると、なんだか、胸にモヤモヤしたものがこみ上げてくる。客が来たのに、注文も取りに来ない気の利かないウェイトレスにも苛立ちを覚える。
「……ねぇ、急に何なの? あのメール」
「驚いたでしょう? ごめんなさい」
声を潜めて身を縮める赤川さんを、後ろを歩く中年女性がちらりと見た。――そんな態度をされると、まるで私がいじめているみたいじゃない。
「驚いたっていうか……『最後』って、何よ? あんな書き方されたら、誰だって――」
「うん……ごめんね。どうしても小田島さんに会いたかったから」
はっとした。
聞いたことがある。親しくもなかった同級生を呼び出して、宗教に誘うとか洗剤を売りつけるとかそういうの。
私が彼女の顔を見上げたとき、彼女は口を開いた。
穏やかな。……慈悲の表情で。
「小田島さん、やっぱり気づいてないよね?」
「……な、何を?」
「小田島さん、もう2年前に亡くなってるの」
彼女はそう言って、悲し気な目で私を見た。
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