最後のお礼

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「私も子供だったから……そういう能力、隠しておいたほうがいいってわからなくて……。今なら、わかるんだけどね。霊が見えるとか、死んだ人の声が聞こえるとか言ったらどうなるか。――あのころ、クラス中が意地悪したり、嫌がらせしてたけど、小田島さんだけはそれに加わらなかったよね」  私は俯いたまま、ゆるゆると首を振った。 「……加わらなかったけど、止めたわけじゃなかった……」 「うん……でもね、あのときの私にはそれが救いだった。中立でいてくれる人の存在が唯一の拠り所だった。――だから、こうして自分が亡くなったことに気づかずに彷徨ってる小田島さんを……導いてあげたいと思ったの」  赤川さんが身を乗り出して、きらきらした目で私を見ている。  若干気圧されて、私はその目を見返した。 「導くって……その……あの世に……?」 「うん。やっぱり本人が納得しないと、あちらに行くことはできなくて……小田島さんが納得できたなら、私が手伝ってあげられる」 「……あの世……」  自分の体を見下ろす。  誰にも気づかれず、先へ進むことも戻ることもできず……ただ彷徨っていた自分。
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