星とキスが降る夜は

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「わ…」 (まぶ)しさに手をかざすと、向こうもライトを落とした。 え? どういうこと 車はゆっくり止まった。 エンジンを切って(たかし)が降りてきた。 「昂…」 「何してんの。寒いのに」 「…星、見てた」 「そうか」 彼は私を(とが)めなかった。代わりにブランケットを持ち出して私の肩に掛けてくれた。 「…ありがとう」 後部座席に愛しいふたつの寝顔。 「泊まるのはナシにして帰ってきたんだ。ギリギリまで星を見て、二人とも喜んでたよ」 「そう。よかった」 「ママがひとりぼっちじゃ、かわいそうだって」 「そっか…」 「ごめんな。一人にして」 「ううん」 温かな腕が私を包む。 意地を張っていた涙があふれた。 「ただいま」 「…おかえり」 私が鼻声で答えると、昂は私の涙を拭ってくれた。 「…二人が写真送ってくれて」 「ああ」 昂がおかしそうに笑い出す。 「訳わかんないヤツな。何が写ってるんだって言う」 「そう。でも、すごい嬉しかった」 「送るって聞かないからさ。あれでも一番よく撮れたんだよ」 私は黙って彼に抱きついた。 昂の腕の中は、いつでも私を優しく受け止める。 「やっぱり、ハコがいないとつまんないよ」 「そう? 男同士で気が楽じゃないの」 「初めだけね。だって、一番の目的はさ…」 昂は腕に力を込めた。 「ハコとこうして星を見たかったから」 彼の匂いに包まれて、私はふふっと笑った。 「何?」 「同じこと考えてたなって」 「そう? ならよかった」 彼は微笑むと私に優しくキスをした。
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