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『……蔵元専務、申し訳ございません。私の落ち度です』
自分の馬鹿さ加減、卑劣さに腹が立ち、最悪の事態に拳を握りしめる。
令嬢を騙した報いを受けた気がした。
さらにこの方面を調べ、自身の浅はかさを呪った。
なにもかも後手に回っている自分の対応に怒りと失望が込みあげる。
どこにぶつけていいかわからない混乱した想いが心の中に渦巻く。
『やはり……いえ、私も武居からもっと詳しい話を聞けばよかった』
蔵元専務は申し訳なさそうな様子で、希和の捜索に手を貸すと告げた。
なぜそこまで心配するのか、もしや下心があるからかと邪推する俺に、自身の問題に巻き込み、迷惑をかけてばかりだったので希和には幸せになってほしいと静かに語った。
『ご存知の通り、うちと樋浦家は代々深い付き合いをしてきました。ですが現当主の考えは賛同できかねるものが多く、関係の見直しを極秘裏に進めていました』
強引な営業手口、脅しのような契約方法に幾度となく苦言を呈してきたという。
『恵理の、武居に対する傍若無人な振る舞いは何度も諫めてきました』
穏便に改善を求めていたが、さすがにもう看過できないと考えたらしい。
幼馴染への気持ちは親愛に近く、恋愛感情ではないと断言する。
『樋浦親子が暴走すると危険です。当主は娘に甘いので、武居の幸せを妬んだ恵理に協力して手を出した可能性もあります』
最悪の助言に目眩がした。
舘村の令嬢の婚約云々も幼馴染が口を滑らせたらしい。
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