9.やっと見つけた彼女~SIDE惺~

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「公表して結婚します。もちろん悟己は私の息子として手続きをとります」 「希和ちゃんは了承したの?」 「……一応、は」 真っ直ぐな問いかけに言葉を濁す。 強引に、半ば無理やり了承させたとは言いにくい。 「どうせ上手く言い含めて丸め込んだんでしょう。まあ、あれこれ変に悩んで気に病む子だし、そこは正解ね。過去に嫉妬に巻き込まれてひどい目にあったと杏実ちゃんから聞いたわ」 「……ええ、最低最悪な噂でした」 「そのせいかしらね、希和ちゃんは人目や反応をとても気にするの。本心もなかなか口にしない。もっと我がままになればいいのに、いつも自分のことは後回し」 ふう、と息を吐いた沢野井さんは幾分穏やかな表情を浮かべた。 「絶対にふたりを幸せにしなさい。今度泣かせて傷つけたら許さないわよ。私だけじゃなくて姉さんも敵に回すから」 「肝に銘じます」 「そうそう、ひとつ忠告よ。希和ちゃんはまったく気づいていないけど、今、好青年から好意を寄せられているのよ。あなたが再登場しなければ彼に任せたいと、陰ながら応援していたのに、残念だわ」 物騒な物言いに心が一気に冷える。   「白鳥さんですよね? 保育園で会いました」 「あなた、その顔……フフ、天下の嵯峨副社長も嫉妬するのね。安心しなさい、希和ちゃんは彼に恋愛感情をもっていないわ。でも魅力的な子だから今度こそしっかり捕まえなきゃダメよ」 面白そうに頬を緩める沢野井さんの姿に居心地が悪くなると同時に、年下の青年を思い出し眉間に皺が寄る。
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