10.甘すぎる新生活

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熱を帯びる頬とくすぐったい心を抱えながら、急いで体を起こす。 確かに体がだるくて痛いけれど、幸せな痛みに頬が緩む。 ブラインドから差し込む光が眩しくて思わず目を細めた。 「ママ、おはよう!」 リビングに入ると、ダイニングテーブルに座った悟己に声をかけられた。 テーブルの上にはトーストとスクランブルエッグ、ハム、サラダといった美味しそうな朝食が並んでいた。 「全部パパが作ってくれたの」 片手にフォークを握りしめて嬉しそうに話す姿と、優しく息子の頭を撫でる惺さんの仕草に胸が甘く疼く。 「パパね、お料理がダメだったんだけどたくさん練習してできるようになったんだって」 無邪気に教えてくれる。 何度も夢に見ていた穏やかな光景に現実感がわかず、胸の奥から熱く言葉にならない思いがこみ上げてくる。 「これからはこんな毎日を当たり前にしたい」 すぐ近くにやってきた惺さんの胸にふわりと抱きこまれる。 なにも言っていないのに、なんでわかるの? 「大切にする、お前も悟己も」 耳元でささやかれた言葉に視界が滲んで、広い胸に額を押しつけた。 失うのも信じるのも怖いのに、どうしても大好きな人。 あきらめきれない男性。 なぜ彼だけがこれほど特別なのだろう。
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