10.甘すぎる新生活

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本当に、大丈夫?  新たな関係を、きちんともう一度築ける? 再会してから何度も自問自答したけれど、明確な答えは出ない。 ううん、出すのが怖い。 彼の胸に素直に飛び込めないのは、過去への恐れと、自信の無さが原因だった。 今の惺さんは、あの頃よりずっと魅力的だ。 財力も有能さも、整いすぎた容貌もなにもかも私とは不釣り合いすぎる。 以前のように愛しているから一緒にいたいと言えるほど、若く真っすぐな情熱は今の私には残っていない。 顔を上げて見つめた惺さんの目は優しくて、答えを出せない自分が卑怯に思えた。 「ママ、どうしたの? 一緒に食べようよ。今日はお引っ越しなんだって!」 ご機嫌な悟己の言葉に瞬きをする。 「なんの、話?」 「結婚して一緒に暮らすと昨夜話しただろう? 婚姻届は来週中に出すつもりだが、引っ越しはこの週末に済ませる」 「ちょっと待って……準備が」 「希和の心の準備が整うのを待っていたら、いつになるかわからない。もう逃がさないと言っただろ」 私の乱れた髪を直すふりをしながら、至近距離でひそやかに言い放つ。 「お前にだけは独占欲が強いって知らなかった?」 私の頬に長い指で触れ、口角を上げるこの人は誰? こんなに感情をむき出しにする人だった? 甘い執着にも似た彼の強い想いに、鼓動がどんどん速まっていく。
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