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母とは数回しか会ってないのに、その印象は強く残っていた。人には色んな感情があって、シルヴィアから受けた愛情に対して母から受けた感情は正反対のものだった。それが憎悪という感情だと知った時にはもう会うことも無くなっていた。
『――近づかないで!!』
過去に何も考えずに近づいた幼かった私を母は叩いた。叩かれた頬は痛んだけれど、防衛本能か勝手に私自身にヒールをかけたようで、一瞬で痛みはなくなった。それでもずっと何故だか胸が痛くて、自分にヒールを何度もかけても痛みがなくならず、部屋で一人で泣いて耐えたことを今でも覚えている。
「はぁ、はぁ……」
グレイと女王様と呼ばれていた母を見て、急いで部屋に戻ってベッドに潜り込んだ。心臓がバクバクと音を立ててうるさくて眠れない。グレイが母と繋がっていたことは、ありえない訳ではない。彼はこのお城の使用人なのだから、女王である母にも仕える立場なのだから。でも、それでもショックが大きかった。だって、見間違えでなければグレイは女王に膝をついて、その手の甲に、キスをしていたのだから。
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