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鳥と使用人
「アイラ様。新しい使用人のグレイです。よろしくお願いします」
「……シルヴィアは?」
「シルヴィアは亡くなりました。ですから私があなたの使用人になります」
「え……そんな……」
私はシルヴィア以外の人間を、ほとんど見たことがなかった。定期的に“先生”と呼ばれる白衣を着た人たちを“研究”と称した何かをされている間に囲まれた時に見たことがあるくらい。皆声が低くて冷たくて、いつも温かい声をかけてくれるシルヴィア以外の人間は恐いものだと思っていた。
私よりずっと背が高くて逞しく、綺麗で艶やかな黒髪で短髪のグレイと名乗る青年の声は低い。しかし淡々としているけれど冷たさは感じなかった。シルヴィアの訃報を聞いて泣き崩れた私のそばに駆け寄って、ハンカチを渡してくれた。そして何も言わず、ただ静かに私のそばにいてくれた。
「……グレイは何歳なの?」
「今年で17歳になります。アイラ様と同じ年ですね」
「そう……シルヴィアのことは知っているの?」
「いえ、前の使用人ということだけ教えていただきました。もし差支えがなければ、どのような方だったかを教えていただけませんか?」
「……どうして?」
「アイラ様がこれほどに悲しむ方のことを知りたいと思いまして」
「……いいよ」
「ありがとうございます。いいお紅茶がありますので、淹れて参りますね」
彼の笑顔は温かく、私はシルヴィア以外の人間の温かさを初めて知った。
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