鳥と使用人

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「アイラ様のヒールのおかげでこの国が存続していることはご存じかと思います」 「うん……」  私のヒールは研究者の先生たちが言うには“最恐”らしい。このチューブを通して国全体に私のヒールは行き届いている。この部屋は国の中央にあるお城の真ん中。つまりはこの部屋がこの国の要になっている。私がここから離れると国が機能しなくなるようだ。だから私の為にも、この国の為にも私はこの部屋から離れてはいけないと何度も言い聞かされていた。  小さい頃は魔法に集中していないと他のことは手につかなかった。今では呼吸をするのと同じくらい、ヒールを使うことは当たり前になっている。だからこうやってグレイと話している間もずっと、国中で私のヒールの効果は持続している。 「アイラ様のヒールによってこの国の防護魔法は壊されたとしても瞬時に再生されます。突破されることはありません。こちらの魔法使いの魔力が枯れることもなく、兵士たちの怪我ですらすぐに治ります。体力がなくなることさえありません」 「それとなく話は聞いてる……私がここに居れば、国民は幸せでいられるって」 「そうです。しかしアイラ様にも寿命はございます。そこで女王様は先を見据えて私に重要な任務を授けてくださいました」 「任務?」 「アイラ様のヒールを私に継承するのです。私にはその適性があると判断されました。この実験が成功すれば、この国は永遠に幸せになるでしょう」  私は温かいと感じていたグレイの笑顔に少しの不安を感じていた。
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