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それからは私のヒールをグレイに継承させる実験が始まった。実験の間、私が感じた不安を拭うかのように、グレイは私に恐いくらい優しく接してくれた。
「アイラ様はこのチューブからヒールを送り込んでいるのですよね」
「うん。そう聞いてる。最初は私の手で触れたものしか魔法は効かなかったの……小さい頃にこのチューブを体に取り付けられて、ここに流し込むようにイメージしてって先生って呼ばれてる人たちから言われて、言われるがまま……次第に影響範囲が触れたところだけじゃなくて、拡がって……」
「左様でございますか。では私も最初は手から扱いましょう。お手を取っても?」
「うん」
グレイは椅子に座っている私の両手を取ると優しく握りしめた。シルヴィアと違ってゴツゴツとした太くて長い指。手には傷跡のようなものがあり、手のひらは私と違って固い。
「グレイの手……私と全然違うのね」
「男性の手を触るのは初めてでしたか……不快でしたか?」
「ううん、そんなことない。全然違うけれど、シルヴィアと同じで温かくて安心する」
「ありがとうございます……失礼ですがアイラ様、これからのことで一つお約束頂きたいのですが……」
「なぁに?」
「……実は私の実験が上手く行けば、アイラ様をこの部屋からお出しすることも可能になると聞いております」
「え⁉」
「あくまで上手く行けば、ですが。そしてその際には、シルヴィアのことは一切口外しないとお約束いただけますか?」
「どうして?」
「今はお教えできません……ですが、どうか、今は……」
「分かった。分かったから。約束するから……そんな悲しい顔をしないで」
「ありがとうございます……いつか、必ず、お伝えしますから」
切羽詰まったように懇願するグレイの姿に思わず私は一つの約束をした。
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