鳥と使用人

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 1週間経っても、グレイは私と手を繋いだままだった。手を繋いでいる間に私が出来ることがなくて、グレイと間を埋めるように明るい未来のことを語るようになっていた。外に出たら何をしたいか、外の世界にはどのような楽しみがあるのか。 「ねぇグレイ……外の世界の話はしてはいけないのではなかったの?」 「申し訳ございません……アイラ様とのお話が楽しくてつい……どうかこの未熟な使用人の粗相を御内密にしていただけませんか?」 「もちろん。私たちの秘密ね」 「ありがとうございます」  グレイが未熟な使用人だとは思えなかった。シルヴィアがしてくれたようにグレイも部屋の掃除や食事の手配の手際が良かった。おそらくこの内緒話は、グレイの優しさだと感じていた。シルヴィアを失った私の寂しい心の隙間を埋めるように、グレイは面白おかしく外の世界の話をしてくれた。シルヴィアとの内緒話のことをグレイには秘密にしていたから、シルヴィアから聞いた話を初めて聞くようなフリをしたけれど、グレイは私が聞いていた話よりずっと大げさに話をするものだから、聞いていて飽きることはなかった。  ただ本当に手を繋いでるだけの状態が続いていて、ヒールの継承とやらが進展しているのかは私には判断が出来ないままだった。
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