鳥と使用人

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 実験の手応えを感じることなく、その時は唐突に訪れた。 「アイラ様、外出の許可が降りましたよ」 「え⁉本当に⁉」 「はい。しかしまだ実験段階ですので城から出ることは叶いませんが……アイラ様?」 「……ずっとこの部屋にいたのに……どうしよう、出てもいいと言われたら、何だか恐くなってくる……」  心の中は期待と恐怖が交じり合っていた。グレイはそんな私を安心させるように手を取って、微笑みかける。 「城内で一番綺麗な場所へ私がお連れいたします。手を離すことはありませんので、ご安心してください……そしてお忘れでないと思いますが、決して、部屋の外ではシルヴィアのことは口外されないようお願いします」  グレイに対してすっかり信頼を置いていた私はただ頷いた。グレイの手によってずっとこの部屋に縛り付けるように繋がれていた体のチューブを取り外してもらう。心も体も軽くなって、そしてグレイに先導されるように部屋を出た。  グレイにぴったりとくっつくようにして後ろを歩く。自室を出ると固くて冷たい壁と廊下が続いていた。薄暗いその道を抜けると大きな広間に出る。他の使用人と思われる人間や、鎧を着た騎士がいて、すれ違う私たちを物珍しそうに見ていた。 「グレイ、シル……あ、違う。あなたから聞いた通り、騎士というのはあんなに大きくて固さそうな鎧というものを着ているのね」 「そうですね……さてアイラ様、到着しましたよ」  グレイが連れて行ってくれた場所は中庭と呼ばれる場所だった。絵本でしか知らなかった色とりどりの花が敷き詰められた空間がそこにはあった。自室の高い天井にある小さな窓でしか知らなかった空が、頭上に広がって、いつも一部しか見えていなかった雲の大きさを初めて知った。 「綺麗……」  自然と涙がこぼれていた。初めて出会った頃のように、グレイはそっとハンカチを渡してくれた。そして何も言わず、ただ静かに私のそばにいてくれた。
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