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何度か押したけど出てくれそうにない。嫌な想像が膨らんでいく。もしかしたらもう……。
いや、それは考えないようにしよう! きっと大丈夫!
知浩さんに会いたい。どうしても。お願いします!
願いながら、どのくらいそうしていただろう。ここへ来た時には明るかった空に橙色が差しはじめた。
「知浩さん! いる? 私! 満!」
反応がない。周りにも人の気配はなく、山の景色がしんと広がっている。
アパートの他の住人も出払っているのか、誰の気配も感じない。静かすぎてこわくなった。
これだけしても出てこないなんて、諦めるしかないのか。でも、このまま帰るわけにはいかない。ここで諦めてしまったら、今後いっさい知浩さんと関われなくなるような気がする。それだけは嫌だ。
「知浩さん言ってたよね。私の作品は人を元気にするって。それね、逆だよ。私が知浩さんに元気をもらって、だから次の作品を描けてた。知浩さんの言葉がなかったら、ここまで描いてこられなかったよ」
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