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⑤暗黒騎士団長
「ハハハハハッ!ここまで来たらやることと言ったら決まってんだろぉがぁっ!」
いやいや、分からない!分からない……!
騎士団長の豹変ーーいや元々こんな感じだったかもしれないけど……っ。
でもちょっと……ヤバくない……?しかも膨大な魔力。今まではその魔力を何となく感じていた。けれど今なら分かる……。
騎士団長の魔力は……属性は、闇だ……!
「さぁ……蘇れ、国王の骸よぉっ!」
「ちょま……っ、あなたまさか……!」
騎士団長が国王の骸に手を翳し、膨大な闇魔力を込める。
「蘇れ、エルンスト・リュミエーラ!アンデッドとして……、この俺の下僕としてエェェェッ!」
「ひいぃぃぃっ!?」
ちょっとはいい人なのかなぁかと思ったけどそんなことなかった!やっぱりこの騎士団長……!ヤバいやつじゃない――――――――っ!!!
しかも、しかも禁じられたネクロマンサーの闇魔法を国王の骸にかけるって……!そして、その国王を下僕としてこき使うなんて、まさか……まさかこの男……!
リュミエーラ王国を支配する気じゃないでしょうねぇっ!?
そして骸におどろおどろしい、闇が巻き付き、そして放たれる。
「さぁ……目覚めよ……国王ハゲえぇぇぇ――――――――っ!」
解き放たれた闇から産まれたのは……腐敗臭漂う灰色の肌の……アンデッド……!
目の焦点定まってないし、『うー……あー……』とか言ってるし……!
それに……さっきまでは確かに頭蓋骨に髪の毛が点在してたけど……アンデッドとして蘇ってフサフサになっちゃってるわよ……!むしろハゲから復活したんだけど……!?いいの!?ハゲで……っ!!
「だけど……さすがにこの見た目の国王のアンデッドを盾に国を支配するのは無理なんじゃないかしら……」
国民みんなにバレバレよ。いくらあなたが国民の人気が高いからって無理がありすぎると思うのだけど。
「……は?国を支配……?」
ぽかんとしている騎士団長。
「え、違うの?あなたリュミエーラ王国を影で支配するんでしょ!?」
「ん……?支配するのはアルヴィンだろ」
「……いや、アルヴィンに支配させるの!?まぁ王族だけど……!王子だけど!」
「さぁ~て、国王ハゲ、聞け……。お前は既にこの俺の下僕となった。逆らうことなんざできねぇよ……ナァ……?」
「……っ」
ど……どうしよう。私一応光魔法使えるのよね……。何かできないかしら……何か……。
「だから……」
ぐ……っ。
「娘さんをくださああぁぁぁ――――――いっっ!!」
「……は?」
え……?いきなり何を言い出してんのこの暗黒騎士ぃっ!!
「……だ……が……断るうぅぁうぅっ!!」
騎士団長の言葉に、アンデッド国王が答える。
「うるぜえぇぇっ!ハゲ国王よおぉぉっ!俺の下僕のてめぇに拒否権はねぇんだゴルラァァァッ!!!」
「いやいや、アンタは何がしたいのよおぉぉっ!!」
いきなり娘さんをくださいとか言い出して、拒否られたら無理矢理断行って……おかしいからあぁぁっ!
「鬼畜うぅぅ――――――――っ!」
国王も負けてない。この暗黒騎士団長に対し、何という奮闘だ。
「てめぇ、いい度胸してやがるナァ……?」
「当たり前じゃあぁぁっ!だって娘だぞいいぃぃっ!」
――――――娘……。私のこと、ちゃんとそう思ってくれていたのか……。
「だが……」
国王が黙りこくる。
「黙ってねぇで言えやゴルラァァァッ!!奥歯ガタガタ言わすぞクソハゲエェェッ!!」
「いーややーめなさいよぉぉっ!ただの意味ありげな間でしょうが!!」
「ま……冗談はこれくらいにして」
……冗談だったの……?本当に?まぁ元の顔に戻ってはいるけれど。
「金を出せエェェッ、ジジイぃぃっ!」
再びの芸術性高いゲス顔しかも今度は強盗か――――――いっ!!!
「まぁ、待て。金ならちゃんと払う」
え、払っちゃうの?国王払っちゃうの?この強盗騎士団長に?そしていつの間にかしゃべり方普通になったわね、アンデッド国王。声帯が安定したのかしら。
でもいくらなんでも……まずは騎士団に通報……。ダメだったわ。その団長がコイツじゃない。
「それに、わしはこの通りのハゲの骸となった」
いいえ、むしろフサフサ!今フサフサ!
「だからこそ、もう娘を守れん。良識ある使用人や近衛騎士たちは、わしが死んだと同時に次々と殺され、または左遷されていった……」
それまでは国王が生きていたから、最低限の守りはあったということ。
「けれどそれでも、それ以上できんほどに、わしには力がなかった」
「それって……」
「フレイア公爵家だ。フレイア公爵家が影から国を動かし、そしてその手中である王妃が嫁いだ時点でもう……詰んでいたのだ」
「……え、じゃぁ何で不倫したんですか?」
「うぐぅっ、それを突かれると痛いが……恋とは盲目だからな」
「ハゲろジジイ」
「いやほんとすんません。……そしてそのせいで第二王子の母も死んだ。殺したのは……フレイア公爵家の手のものだ。あの家は普通の公爵家じゃない。王の影を務めてきた家だ」
「そんな家が……国を裏から乗っ取っていたのね……。あれ、でも今のフレイア公爵は……」
私たちの味方よね……?少なくともその支配をしてきた王妃とその兄は死んだ……。
いや、騎士団長がアルヴィンを盾に国を支配しようと……してるのかしら本当に。そんな疑念は抱きつつも。
「だから、入れ換えたのだ」
国王は静かにそう告げた。そして騎士団長がニィッと口角を上げる……。
「まぁ、それでな。フレイア公爵家は第二王子の暗殺を目論んだが、あの子は魔力が高く、それで生き残った。それに業を煮やしたフレイア公爵家は……影ではなく……闇ギルドに依頼を出した」
闇ギルド……!?噂だけは知っている……。表の冒険者ギルドとは違う、裏社会に蔓延る存在。その存在は、世界に闇が有る限り消すことはできない。
「そしてやってきた暗殺者がこの男だ」
「え゛っ」
国王が指差したその人物……は、いや、この場には1人しかいない。
騎士団長、その人だったのだ。そして国王の言葉に騎士団長がニタァッと嗤った。
「ま、まさか国王を殺したのって……っ」
「俺が殺すんなら、この国の金踏んだ食った後だな」
えげつねえぇぇっ!
「だがそれでは金が減る……金の循環システムを作った後だ……!」
それでアルヴィンを後釜につけようと……っ!?
「ほんとゲスな金の亡者だ……いやそれだからこそ、だな。わしを殺したのはこの男ではない。まぁしかしわしは結局フレイア公爵家の手に落ちて死んだが……この男は依頼をこなしてくれたようだ。今思えば……死んでもこうして蘇らせることができるからか」
「そうだねぇ。そうだねぇ。ジジイから金踏んだくり放題!!」
ニッタアァァァァッ!!
最低だこの男……!!
「本当はこんな男に娘をやりたくないんだが……」
私ももらわれることに不安を覚え始めてるわよ。さすがに。
「しかし、この男はやりおった。第二王子をフレイア公爵家の手の及ばない遠い国へと逃がし、騎士団初の平民出身の騎士団長となった。わしもその快挙……いや、企みにのり、爵位を授けた。そしてこの男は騎士団に蔓延る闇をも利用し、フレイア公爵家の中身をごっそり入れ換えた……つまり影をもだ」
「……っ」
国王は普通に言ってるけど……今まで国を乗っ取っていた影の精鋭たちよね、それ。
「そして近衛騎士団も……左遷されたものたちも巻き込み処理を終えたからこそ、クエストの達成報告に来たんだ」
そんなことを……やっていたのか。そしてそうまでしなきゃ……この国は……。
「さて、ここに達成報告の完了を宣言しよう。そしてわしは、第二王子アルヴィンを後継者と決めた。これを、アルヴィンに」
国王が手を翳すと、不思議な紋様が浮かび、そしてどこかへ飛んでいった。
「あれは……」
「あれがあればアルヴィンは国王になれる。むしろ、それがなかったから、王太子の……イーサンは王になれなんだ。本当なら国王が死んだら王太子に委譲される。王太子がいない場合や王太子がそれきふさわしくなければふさわしいものへ……。そしてイーサンはその器ではない。それはお前が一番分かっているだろう?」
「……まぁ」
あれが国王になどなったら……今度こそこの国は終わりだろう。
「そしてその印はイーサンに渡らず、わしの死後も身体に残り続けた。イーサンや王妃は煮え湯を飲まされたように悔しがり、印が渡る方法を探りながら、王が生きていると見せかけることにしたんだ」
「何故……王の身体にそのまま……?」
「そうではないと……アルヴィンが生きていることを悟られてしまう」
そっか……アルヴィンを守るためにも、国王は……。
「あれ……でもよくそんなことができましたね」
「この男にそうなるよう呪ってもらったからな」
「え、呪い?」
「ひひひひひっ」
やっぱ恐……っ!!
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