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「失礼する。ここは魔女カロリーナ殿のお宅とお見受けするが…?」
ある日の午後の事だった。その男がやって来たのは。
この辺りはそうでなくても茂った木々のせいで昼間でも薄暗いというのに、家の中にはびっしりとカーテンがひかれ、どんな光たりとも入れたくないとばかりに真っ暗だ。
その部屋の真ん中で私はびくりとなった。
カロリーナが亡くなったばかりでまだ心の整理もついていないというのに一体誰だろう?
そっと窓に近づきカーテンの端をめくって誰かを確かめる。
なじみの薬売りではないことは確かだと思ったが顔まではあいにくはっきりとはわからない。
薬売りではないと思ったのは薬売りは月のはじめの頃に来ると決まっていたからだ。
それにお客の予定もなかった。
お客は必ずここに来る前に話があるからだ。
カロリーナの作る薬は評判が良かった。それは風邪の薬や熱を冷ます薬、頭痛や腹痛などが主だったが、時には特別な薬を買いに来る人もあった。
カロリーナはとても優秀な魔女だった。
でも私はまだまだ修行中の魔女だった。いえ、魔女でもない。私は力が使えないのだから。
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