グラスワイン

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 廃坑で彼は将校たちに地面へ組み伏せられた。十メートルほど先に的がかけてあった。的の左下には二箇所、小さな穴が空いていた。 「外したら死刑だ」将校は彼へピストルを渡した。  彼は小さく咳をした。そして、外したら死刑だ、と心の中で繰り返した。 「わかりました、といえ」将校は彼へ耳打ちをした。 「わかりました」彼はそのまま答えた。  彼の脳裏に、海苔巻きが浮かんだ。正確には、海苔巻きを作るための機械が浮かんだ。次にステンレスの棒。その棒は、先端が鍵状になっていた。  海苔巻きメーカー。  鍵状のステンレスの棒。  彼はピストルを構えた。撃った。  レストランで彼はグラスワインを飲んでいた。幼い息子が飲ませてほしいと彼へせがんだ。 「それはだめ」妻が息子をたしなめた。 「ほら」彼はふざけて、息子へグラスを渡すふりをした。
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