師への尊敬「二人の学者」

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1876年。とある大きな島国の地方都市ベカトワ。この街は今、未曽有の大混乱の渦中に存在した。 ことの始まりはある日、突然街の住民が急死したことから始まった。その死因は病死。しかし、ただの病で片づけられるような話ではなかった。   病名はフィリジア病。風に似た症状を引き起こし、進行が進むと脳細胞が破壊され、全身の器官機能が停止するという「伝染病」である。この病が急速にベカトワの街の全域に蔓延し、住民たちは死の病と名付けたこの病の前に次々と倒れていった。 だが、何故突然こんな病が発症したのか。原因は、この街の南東にある化学工場にあった。その工場の薬品廃棄物や汚染された水にフィリジア病を引き起こす細菌が発生し、みるみるうちに増殖した。 「フィリジアス」と名付けられた病原菌は水中から空気中に舞い上がり、吸い込んだ者を無差別にフィリジアに感染させる。この未知の細菌への対抗手段は当時の医学には存在せず、不治の病として広がっていった。   だが、そんな死神のような病で命を落とす人々は、三年後には一人としていなくなった。それは、ある二人の研究者の大いなる功績の賜物である………
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