早すぎた別れ「温もりの意味」

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帰宅した彼女の声が、誰もいない室内に響く。両親は仕事や会議で日が昇っている間は忙しく、めったにこの時間帯で家に居ることはない。閑散としたリビングに足を踏み入れ、大きなソファーに腰掛ける。誰もいない自宅は寒々としていた。中が広いとなおさらそれが強調される気がする。しかし、もうこのような状況には慣れたものだ。彼女が子供の頃から何ひとつ変わらないのだから。最も、小さな少女であった当時は寂しくて自室に引きこもって泣いていたものだが。 少し昔の憧憬を思い出していた彼女は、鼻で笑ってそれを一蹴した。   おもむろにテレビをつける。いつものようにニュース番組にチャンネルを合わせ、テーブルに置いてあったスナック菓子に手をつけた。ニュースが好きなのは世の情勢を気にする両親の影響だ。今日はあまり変わり映えしない報道ばかりなのですぐチャンネルを回してしまったが。 次に映ったのは最近やっているドラマ。ちょうど場面は主人公が告白をしているシーンだった。見入っているうちにいつの間にかまた赤面しているのを感じ、慌ててテレビを消す。変わらない自分の思いに思わず苦笑する。 立ち上がって階上の自室へと彼女は歩き始めた。そういえば荷物を置いてくるのも忘れていたのだ。   時渡りは部屋の片隅で鞄から水の入った小瓶を取り出した。揺らめく青い輝きが、少女の顔に波紋の様子を浮かばせる。先ほどから女の想いを眺めていた彼女だが、まだ想いの中核を掴めずにいた。水を飲み干し、女の想いに深く同調する。そして新たに時を越えて、少し先の未来を時渡りは垣間見た。
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