独占欲「兄への嫉妬」

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衰えることを知らぬ炎は、やがてその勢力を一室の外へと伸ばし始める。   「ひっ……」   迫る炎に怯えて、少年はガタガタと震えていた。 逃げなければならない。だが、兄は? 生きたい。しかしそれでは兄を見捨てる事になる。少年の幼い心は葛藤した。 そんな彼の想いはつゆ知らず、炎は徐々に屋敷を破壊する。迫る烈火から逃げることもできず、少年はその場で泣くことしかできなかった。   そんな惨事の中、いつものように父が帰ってきた。血相を変えて居間に駆け込み、炎に飲まれようとしていた少年を間一髪で助け出す。   「お兄ちゃんはどこだ?」   冷静な顔で少年に問いかける。未だすすり泣いている少年は、震える手で燃え盛る台所を指した。   「お前は隣の家に行きなさい」   そう言って父は立ち上がり、既に居間を占拠していた炎の中に飛び込んでいった。少年は泣きじゃくりながらも父に言われたとおりに隣の家に駆け込み、異変を家主に伝えた。       その家の家主の通報によってすぐに消防隊が駆けつけ、消火作業が始まった。赤々と燃える屋敷。父と兄との思い出の詰まった屋敷。それが今、音を立てて崩れさろうとしている。 その時から、少年の苦悩は始まっていたのだ。   炎が鎮火された後、二つの焼死体が発見された。少年の父と兄だった。 変わり果てたその姿を見て、少年の思考は途絶えた。
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