4,供養と成仏

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クリスマスまであと1週間という夜。 小夜は去年飾ったミニクリスマスツリーを押し入れから出して、電球に明かりを点した。 部屋の電気を消してツリーを眺めていると、体の内側からふつふつと幸せな気分が沸き上がってくる。 ふと思いついて久々にショパンの「幻想ポロネーズ」をかけてみた。 すべてが調和すると満足感に浸った小夜は、そのままウトウト眠った。 目が覚めると、そこは現実ではなく、夜の空白地帯だった。 小夜は胸騒ぎを覚えて痺れる体に鞭打って起き上がり、隣を見た。 しかしそこはもぬけの殻で、透の人影はなかった。 これでいいのだ。 小夜は一抹の淋しさが心の奥に吹きすさぶのを感じつつ、思った。 その時、外から何かが聞こえてきた。 小夜はCDを止め、胸をドキドキさせながら音に耳を澄ませた。 いちょうの葉は散り尽くしたのに……。 しかしそれは、いちょうの木から流れてくる葉音を模した音楽だった。小夜はあえて外を見ず、いちょうの音楽に聞き入った。 それはもはや伴侶を失った悲しみの音色ではなく、感謝のこもった愛の曲。夜の窓辺に寄せるセレナードだった。 クリスマスツリーの明かりといちょうのセレナードは、同じものから生まれたように釣り合っていた。 小夜はあふれる涙とともに、思いを込めて呟いた。 「ありがとう。そしてさようなら」 (了)
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