418人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
「この紅玉には紅花の粉が仕込まれていたから。言ったでしょう、紅花を使ったものは装飾品もだめだって。陽の光にかざした時に気づいてしまったの。つまり、凜妃さまに子ができないよう細工されていた」
「だって、これは陛下から下賜されたもの。陛下がわざわざ希少な石を取り寄せて……」
ようやく、凜妃は陛下の意図に気づき、目を見開いた。
「陛下は私に子ができないように……」
初めて知った真実に、凜妃は愕然とする。
赦鶯陛下は最初から凜妃を敬遠していた。
氷妃の姪である凜妃に子ができないよう細工していた。つまり、舒一族の勢力を大きくさせないよう、あらかじめ手を打っていたのだ。
「さあ、もう言い逃れはできないわよ。墨も化粧品も何もかも、すべて恵医師に調べてもらっている。それらが凜妃さまから贈られたものだってこともみなが知っている」
諦めたように凜妃は肩をすくめた。
「ええそうよ。何もかも私がやった。私は一族のためにも皇后にならなければいけなかった。没落した一族を再び繁栄に導くために。一族の命運がこの肩にかかっているのよ。なのに私は何も果たせていない。せっかく陛下の妃となっても、寵愛すらしてもらえない。おまえのような貧民に、私の苦しみなど分からないでしょうね。さあ一颯、この娘を殺して! そして、皇帝の座を奪い返すの!」
最初のコメントを投稿しよう!