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では、あの女が氷妃。
いや氷太妃。皇太后と先帝の寵愛を競った妃。そして、一颯の生母。凜妃の叔母。今回の陰の黒幕。
「一颯、あの二人よ。白蓮の町に来てあたしの母のことをあれこれ聞いてきたのは!」
蓮花は氷太妃の隣に立つ女性二人を指差した。しかし、指を差された本人たちはしれっとした顔で首を傾げていた。
「なんのことだか分かりません」
「この娘、何か思い違いをしているのでしょう」
「何言ってんのよ! 間違いなくあなたたちじゃない。あたしの顔を忘れたとは言わせないわよ!」
氷太妃はくすりと笑い、一颯を見る。
その目にはなんの感情も表れていなく、実の息子を見る目ではなかった。
「さあ、氷太妃さま居室に戻りましょう。外の風はやはりお身体に障るようです」
「ちょっと、待ちなさい! 逃げるつもり!」
「無礼者! 氷太妃さまはご病気なのですよ」
氷太妃の側仕えに一喝される。
嘘だ。病気の振りをしているだけだ。その証拠に、氷太妃の瞳の奥に、ぞくりと残酷な光が放たれたのを見逃さなかった。
氷太妃の侍女がついっと前に出る。侍女は目を細め凜妃を見据える。
立場は凜妃の方が上だというのに、まるで逆。
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