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「この通り、氷太妃さまはご病気ゆえ、凜妃さまから話を聞いた後に、何か尋ねたいことがあれば改めて伺いましょう」
侍女に支えられながら氷太妃は弱々しい声を発する。
「凜妃、包み隠さず正直に話しなさい。あなたのすべてに一族の命運がかかっているのだから。そのことを忘れてはだめよ。いいわね凜妃」
氷太妃は儚い笑みを浮かべた。
一族のために、おまえ一人が罪をかぶりなさいと言っているようにしか聞こえなかった。
なんて恐ろしい、悪辣な性格の女なの!
「待ってください氷太妃さま!」
助けを求めて凜妃は泣き叫ぶ。
「氷太妃さま! 私はあなたの言う通りに動いてきた。すべては我が一族から皇后を出すためだと言われて! 一族の栄華を取り戻すためと!」
涙ながらの凜妃の訴えもむなしく、氷太妃は振り返ることもなくこの場から去ってしまった。
「一颯! あの女は捕らえなくていいの!」
一颯は首を振り、去って行く実母の背中を見つめていた。
その目に母の面影を追い求める陰はいっさい見られない。
「結局、すべて手を下したのは凜妃だ。凜妃が罪を認め、氷太妃が何も知らない、と言えばそれまでのこと」
「そんなことって……」
蓮花は握った手を強く震わせ、歯をぎりぎりと鳴らした。
頭が良くうまく立ち回った者や、強者が勝つ。
それが、宮廷だということを蓮花は改めて思い知らされた。
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