エピローグ

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エピローグ

 季節は一巡りし、また春がやってきた。桜の花びらが風に舞い散る。  長いようで短い後宮生活であった。  とにかくいろいろあった。  死にそうになったこともあったが、今となって思えば、良い思い出……。 「良い思い出? そんなわけないでしょ! 殺されそうになって良い思い出とかあり得ないし、ほんと、あの時はもうだめかと思ったんだから」 「まさか、おまえが後宮のごたごたに、これほど深く巻き込まれるとは思わなかったんだ」 「あんた、本気でそれ言ってる」  蓮花は目を細め、一颯を見据える。  とまあ、そんなこんなで、ようやく宮廷にも落ち着きを取り戻しつつあった。  長い間、冷宮で暮らしていた翆蘭も解放された。  剥奪された位を取り戻し太貴妃となったが、冷宮での過酷な生活で病にかかり、ろくに侍医に診て貰えることもできず、それがたたり後宮へ戻ってすぐに息を引き取った。  亡くなるまでわずかな間ではあったが、息子である赦鶯と穏やかに過ごし、天へと旅立つその瞬間も、赦鶯に見守られ、静かにまるで眠るように亡くなったのが、せめてもの救いだった。
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