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1 魔法学園の落ちこぼれ
(確か、この配合であってるはず)
ユリミアは、少し震える手で慎重に魔法薬を試験管に流し入れる。何度も頭の中でシミュレーションしてきたのだ、きっと大丈夫だ。
(よしっ、あとは魔力を注いで……っと)
薬液の入った試験管に両手をかざして、魔力を込めた。
透明だった薬液が、少しずつ水色に変化していく。このまま青い液体に変化すれば成功だ。ユミリアは、色の変化を見てホッと胸を撫で下ろした。しかし、その油断が悪かった。魔力量の調整にブレが生じたのか、液体の色は青ではなく、どんどん紫色へと変化していった。
「──っ」
ユミリアは慌てて魔力の調整をしたが、液体の色が戻ることはなく、それどころか、黒く変化しボコッボコッとこの作業では出るはずのない嫌な感じの気泡まで発生し始めた。
(そんな、お願い!成功して!!)
ユミリアの願いも虚しく、ボンッと音とともに薬液は黒い煙になって消えてしまった。
「……ユミリア、不合格」
一連の状況を見ていた魔法薬の教師から不合格通知をされ、ユミリアはガックリと肩を落とした。
今、ユミリアが行っていたのは、魔法薬の試験だ。
それも、とても初歩的なもの。
今のところクラスでユミリア以外で失敗した者はいない。
「はぁ……三日後に再試験するから、きちんと練習しておくように」
「はい……」
呆れたような教師の声に、ユミリアは力なく頷き、トボトボと自分の席に戻った。
クスクスと周りから小さく嗤う声が聞こえてくる。ユミリアは情けなさでじわっと視界が滲んだ。しかし、ここで涙を流せば更に嗤われるだけだ。ユミリアはグッと奥歯に力を入れて、涙が零れないように踏ん張った。
王立魔法学園。
その名の通り、魔法を学ぶ学園であり、王国内の魔力を持つ若者達が通っている。
ユミリアもその若者の内の一人だ。
数ヶ月前、「立派な魔法使いになりたいわ!」と意気込んで入学した。しかし、そんな意気込みとは裏腹に、ユミリアは既に「落ちこぼれ」のレッテルを貼られていた。
結局、魔法薬の試験で不合格だったのは、ユミリアだけだった。
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