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ど、どうしよ。
白田有理いきなりのピンチ。
いや、ピンチではないのかな?
ある意味チャンスなのかな?
ほら、『ピンチはチャンス』ってよく言うじゃん。
いずれにせよ俺の心拍数爆上がり。
入社初日にして、一目惚れの相手かつ所属部署のトップとランチすることになっちゃった。
灰谷ー! 連れてきたんだから多少フォローとかしろよ! と思ってたら、さすがに灰谷が紹介してくれた。
「しろやん、こっちの綺麗なお兄さんがきのぴー……じゃなくて……あれ? なんだっけ?」
「城崎遊馬です」
あきれ顔の城崎さんが助け船を出した。
うぅん、あきれてるところもアンニュイで素敵だな。伏せた長い睫毛が重たげにゆるく弧を描いているのが何とも言えず魅力的だよ。
「そうそう、キノサキね。なんと! 我々と同期な上に法人事業部の部長っていう、仲良くしといて損はないタイプのお兄さんだよ」
なんか聞き捨てならない新たな情報が入ってきた。
「は、同期?」
「そだよ。しろやんとも同い年」
部長にしては若いなぁと思っていたけど、同い年だったなんて。
なんか、運命感じる。
「そいでもって、きのぴー。こっちの可愛い癒し系が、俺の大学の同期の白田有理くんだよ」
「知ってます」
担々麺の汁を飛ばさないよう、慎重に食べていた城崎さんが頷いた。
「さっき挨拶したばかりです。法人に来てもらうことになりましたから」
灰谷が目を丸くした。
「しろやん法人なの!? いいなあ。きのぴーが部長になってから法人は炎上しなくて助勤呼ばれないからさ、何やってんのかいまいち知らないんだよね」
城崎さん、できる人なんだ。
ふーん。そりゃそうだよね、この年で部長とかあり得ないもん。
そういう人って憧れる。好き。自分で言うのもなんだけど、俺、天然入ってるからさ。馬鹿じゃないけど、聡明でもない。時々周りが苦笑する。
あれ? どうしよう。
好きだ。現在進行形でどんどん好きになってる。
城崎さん、担々麺に一味唐辛子が明らかに一瓶分入ってるのを、汗もかかずに涼しげに食べてる。辛いの好きなんだな。
そういう偏った嗜好なさそうなのに。
俺の思い込みかな?
でも、そんなところも好き。
ああ、もうダメだ。こうなると俺はダメなんだ。
どっか一ヶ所でも好きになると、相手の全ての要素が長所に見えてくる。フィルターかかっちゃう。
いや、城崎さんに短所なんてないみたいなんだけどさ。
「しろやん? しろやん、唐揚げ落としたよ」
城崎さんに見惚れてたら、いつの間にか唐揚げをお茶椀の中に落としてた。
「え? あ、ああ、ほんとに。ありがと」
城崎さんて、どんなのがタイプなのかなぁ。
小さいのはダメかなぁ。
見た感じ、城崎さん俺より二十センチ以上背が高い。
うん。俺背が伸びなくてさ。百五十ないんだよね。
でも城崎さん、どうですか、俺。尽くしますから。当店のイチオシですよ。
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