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「で、時給はいくら?」
「それはーー」
言葉の詰まる美波をアタシは睨みつける。
間接照明がいい感じの雰囲気を醸し出すバーで対面に座っているのは、本来ではあり得ない人物。
アフターの時間が詰まってるアタシを呼び出したのは、高校の時の部活の先輩である坂原美波。
仲は良かったと思うが、わざわざ人気のキャバ嬢を呼びだして、された大事な話というのは絵のモデル。
お金の話をした途端に、考え出すなんで問題外。
アタシはわざわざ大口のお客のアフターを断ってまで時間を作ったのに。
「話になんない!もう帰るわ、これから仕事なの」
「ちょっと待ってよ。杏奈」
席を立つと美波から腕を掴まれる。
ちょっとウザい。
「アタシがこの時間にアフターに入ってたらいくら手に入るか知ってる?アタシの時間をお客がいくらで買ってくれるか知ってる?アタシにはお金がいるの。無駄な時間なんてないのよ」
「わかったわ、とにかく席に着いて。時給はいくらなの?」
ようやく美波が乗ってきたとアタシはニヤケが止まらない。
モデルの話はつい最近柚月から聞いていた。
顔のいい画家がモデルを探している。
それを斡旋しているのが坂原美波だということも。
さらに言えば乗り気じゃなかった柚月もモデルをしているうちに、その画家にハマっていった。
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