2.寝取られヒロインは押しが強い

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2.寝取られヒロインは押しが強い

 白鳥日葵は俺、郷田晃生のクラスメイトである。  切れ長の目に通った鼻筋。潤いのある唇は艶があり、高校生ながらかなりの色気を放っている。  エロ漫画のヒロインらしく、豊満な胸にくびれた腰のラインが素晴らしい。太ももも肉感的で、言葉を選ばずに言うなら男の性欲を刺激する身体だ。  フィクションらしい長いピンク髪は、作中で清楚の象徴みたいに描写されていたっけか。郷田晃生の赤髪は染めているのに、あのピンク髪が地毛ってのはどういうことなんだろうね? 「え、えっと郷田くん……早速、だけど……す、する?」  そんな美少女に誘われているというシチュエーション。うん、ちょっと状況を整理させてほしい。  俺は転生したばかりということもあって、情報収集することにした。とは言っても、近所を探索しようとぶらぶら歩いていただけなのだが。  そんな時に泣いている女の子を見かけた。見事なピンク髪に「漫画の世界すげえ」とある種の感動に震えていたら、気づかれて声をかけられた。 「郷田くん? な、なんでこんなところに?」  その泣いている女の子こそが、原作のメインヒロインである白鳥日葵だったというわけだ。  関わらない方がいい。そう思ったものの、この近辺はガラの悪い連中が多かった。今もその辺をうろついており、白鳥のメリハリのある身体を見てニヤニヤしている奴らがいる。  今俺がいなくなったら、悪い男連中が白鳥に近づくだろう。悪役の俺がいなくても、彼女はすでにピンチに陥っていた。 「この辺は危ないぞ。家まで送ってやるから早く帰れ」  なので彼女をここから安全に離れさせるための提案をした。  最低限の関わりのつもりだった。特に何かよからぬことをしようという考えは、少なくとも俺にはなかった。 「……郷田くん、ついて来てほしいの」 「へ?」  白鳥ががっと俺の手を掴んだ。何か決意したみたいな顔に、逆らえる俺ではなかった。  想像以上に強い力でぐいぐいと引っ張られるままついて来て、辿り着いたのがラブホテルだったというわけだ。 「いや意味わかんねえよ!」  流されるままついて来て、彼女がシャワーを浴びてバスタオル一枚になってから出てくるセリフではないとわかっている。  しかし、こちとら転生したばかりで頭の整理すらまともにできていなかったのだ。メインヒロインに遭遇しただけでもいっぱいいっぱいだってのに、突然の事態についていけなかったとしても仕方がないと思う。弁明の余地はあるはずだ。 「うぅ……、やっぱり郷田くんも私に魅力がないって思うの?」 「はい?」  見れば、白鳥が悲しそうに肩を落としていた。素肌をさらす肩から腕のラインでさえエロスを感じる。 「そんなエッチな格好しておいて何言ってんだ?」 「こんなエッチな格好をしても、私には魅力がないのよ……」  なぜか落ち込む白鳥。落ち込みすぎて「ずーん」って効果音が聞こえそうだ。  魅力がないって本気で言ってんのか? そんなに深い胸の谷間を見せつけておいて? バスタオルを纏って腰のくびれを強調しておいて? 触り心地の良さそうな太ももを露わにしておいて?  この女、男をなんだと思っているのだろうか。 「お前はバカか」 「ば、ばか?」  白鳥は困惑する。いやいや、こんな格好で学校一危険な男を誘惑するとか、物を知らないにもほどがあるぞ。 「白鳥みたいな美少女にそんな格好されて誘惑されたら、大抵の男は襲うぞ。身体を隅々まで蹂躙されて快楽漬けにされて、最終的には二度と学校に通えなくなるんだ」 「じゅ、蹂躙……。か、快楽……?」  耳慣れない単語に恐怖を覚えたのか、彼女の喉が鳴る。  ちなみに、俺が言ったことは原作での白鳥日葵の末路である。確か郷田の竿に堕ちた彼女は高校を辞めて、都合の良い性奴隷になるんだったか。漫画だから何も思わなかったけど、実際に他人の人生を無茶苦茶にするだなんて、こっちの精神が病みそうである。 「で、でも……郷田くんは私を襲わないわ! 口から出まかせを言わないでっ」  何これ襲われたいの?  原作の展開ではこうじゃなかったはずだ。確か、力尽くでピー(自主規制)して、脅して関係を続けて、最終的には漫画ならではのご都合主義がありながらも快楽堕ちさせたのだ。  今の彼女は嫌がっているどころか自分から誘惑している。むしろぐいぐいきている。寝取られヒロインとは思えないほどの強情っぷりである。  そうだ。白鳥日葵は寝取られヒロインだった。 「いや待て。そもそも白鳥は彼氏いただろうが。そんな奴とその……そういうことできないって、わかるだろ!」  なんで俺の方が照れなければならんのだ。くそっ、やはりリアルとフィクションは違うってことか。 「私の、彼氏……」  ようやく正気を取り戻したのか。白鳥の動きがピタリと止まった。  だがしかし、次の瞬間彼女の目から大粒の涙が零れた。 「う、ううぅ……う゛~~」  マジ泣きだった。嘘泣きなんかじゃなく、目の前の美少女は本気で泣いていた。  ……女の子に目の前で泣かれると、どうしていいかわからなくなるのは子供でも大人でも変わらないな。  頭をがしがしとかく。ため息をつきたかったが、それは飲み込んだ。  メインヒロインに関わるつもりはない。その考えを変えるつもりはないが、泣いている女の子をこのまま放っておくことも俺にはできなかった。 「なんで泣くんだよ。……話くらいなら聞くぞ」  とても不本意ではあるのだが、俺は少しだけメインヒロインに歩み寄ることにした。
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