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4.お前を見て興奮してんだよ!
さっきから俺をこれでもかと誘惑しているが、学校での白鳥日葵は優等生である。
しかも真面目で一途。原作ではその性格がよく出ていて、郷田晃生から与えられる快楽に最後まで抵抗した。まあ形だけの抵抗で、最初から感じまくっていたんだけども。
そして、だからこそ最後に心まで堕ちる姿が最高にエロかったのだ。あの時は大変お世話になりました!
「ねえ郷田くん。教えてよ……。私、一体どうすればいいの……?」
ピンク髪の美少女は、一糸まとわぬ姿で涙を流す。見ようによっては芸術的な瞬間かもしれないが、俺にとっては精神をゴリゴリ削られる苦行の瞬間だった。
彼女の真面目さがおかしな方向に行ってしまったのだろう。優等生ってのは道を踏み外した時に思いもしなかったことをしでかすらしい。正気に戻ったら枕に顔を埋めて「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」と絶叫するに違いない。
こんな精神状態の白鳥と肉体関係を持つのは簡単だ。
だがしかし、それをしてしまえば俺は終わってしまう。せっかく綺麗な郷田晃生として人生を送ろうってのに、このまま彼女を抱けば状況は違えど寝取る展開は変わらない。
「そんなことないって。白鳥はすげえ魅力的だよ。だから泣くなって。な?」
「嘘よっ。郷田くんも私を抱こうとしないもの。どうせ私なんて女として終わっているのよ……うわあぁぁん!」
どうしよう。この女めんどくさい。
褒めても受け入れてくれない。強情になった彼女にどう言葉をかけていいかわからなかった。
いや、きっと言葉ではダメなのだ。言葉だけでは、証明にならないから。
「白鳥はすげえ魅力的だよ……」
俺は覚悟を決めて、恥を捨てた。
「ここを見ろ! 白鳥が魅力的だって……こ、これが……証拠だ!」
俺は自分の股間を指差した。そこはズボン越しでもわかるほど、もっこり山を作っていた。
股間がもっこり。思春期なら男女問わずその意味に気づくはずだ。そして、思春期男子は股間がもっこりと膨らんでいるところを見られるのがたまらなく恥ずかしい!
「え……?」
優等生の白鳥もその意味に気づいたようだ。真面目とはいってもやはり思春期女子である。
「郷田くん……もしかして、興奮しているの?」
「お、おうよ」
大きく頷いてみせる。女子に股間がもっこりしているところをまじまじと見つめられるとか、かなりの羞恥心をかき立てられる。
これってセクハラだよなぁ。そう思いながらも、白鳥の自信を回復させるためだと羞恥心を振り払った。
「か、可愛い白鳥がそそそ、そんな格好をして反応しない男はいないだろ……。バスタオル一枚で白鳥の色っぽい身体を隠せなかったのに……は、裸とか。こんなの襲われたって文句言えないんだからなっ。だ、だからっ、自分に魅力がないなんて言うな。お前を見て興奮しちまった俺が情けなくなるだろうがっ!」
顔が熱くなるのも構わず言い切った。
なんかすげえひどいこと言った気がする。恥ずかしすぎて途中何口走ったかわかんなかったけど。
恥ずかしさで頭が沸騰しながらも、恐る恐る彼女を見た。身体じゃなくて顔を注視するように気をつける。
「ふふっ。郷田くんって思ったよりも優しいのね」
涙を拭いながら優しい表情を浮かべる白鳥に、くすりと笑われてしまっていた。
「い、いや、優しくはないだろ……」
むしろ膨らんだ股間を見せるとか、セクハラ以外の何ものでもない。訴えられても文句を言えないことをした自覚はある。内心では白鳥がどう判断するかとビクビクしているのだ。
「ううん、優しいわ。恥ずかしそうに、でもちゃんと励ましてくれて……。私、郷田くんに相談して良かったって思ったもの」
「本当かよ。ならもう自分に魅力がないとか言わないでくれよ。こういうのは勘弁してほしいんだからな」
「わかったわ。郷田くん、学校では興味ないフリして、私のことを可愛いって思ってくれていたんだものね」
うっと言葉に詰まる。
可愛いと思っているのは事実だけど、他人の彼女に言うことじゃなかった。励ますためとはいえ、不用意なことを言ってしまったかもしれない。
「わ、わかったらさっさと服を着ろ。彼氏以外の男といつまでもこんなところにいられないだろ?」
「……」
「白鳥?」
なぜか無言の白鳥。その視線は俺のもっこりしたままの股間に注がれていた。
「あの、これ……処理した方がいいのよね?」
「は、え、処理?」
俺の股間から目を離さずに彼女が口にした言葉。その言葉を脳が上手く処理してくれなかった。
「だ、だってっ。男の人がこうなったら処理しないと苦しいって聞いたことがあるし……。元々そういうつもりでここに来たわけだし……。郷田くんにはその、相談にのってもらったお礼をしたいし……」
白鳥は真面目すぎるのだろう。融通が利かないというかなんというか……。
エロ漫画のヒロインだけあって、彼女はかなりの美少女だ。身体つきだって今すぐにでも味わい尽くしたいほどに魅力的だ。
何もなければ、俺だって男の象徴を解放するのもやぶさかではない。しかし、彼女には彼氏がいる。エロ漫画のヒロインというのを抜きにしても、普通にそんな女性に手を出すわけにはいかない。
「……大丈夫だ。お気持ちだけで、充分です」
白鳥の提案を強い意志で断った。地を這うような声になってしまったくらいは大目に見てほしい。こんな美少女に相手してもらえる機会とか、もうないかもしれないんだよなぁ。
「そ、そう? ……別にいいのに」
なぜか白鳥は残念そうにしていた。俺の気のせいだったかもしれないけど。
だって、瞬きする間に彼女はふわりと微笑んだから。
「……ありがとう郷田くん」
微笑む白鳥の顔は、泣き顔よりも百万倍可愛かった。
彼女の顔がすっと近づいてくる。右の頬に触れる柔らかな感触とリップ音がスローモーションで感じられた。
「え?」
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「純平くんには秘密よ?」
悪戯っ子のように笑う白鳥を見て、やはりこの娘はエロ漫画のヒロインなのだと再確認したのであった。
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