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序章:ルビーチョコレートを知っている?
ルビーチョコレートは、まさに私たちの”恋”を表しているよう。
ルビーピンク、いちごみるく、ラズベリーピンク、ローズピンク、ざくろミルク、チェリーピンク……。
ルビーチョコレートの色彩に相応しいグラデーションは多様であることを、僕たちは見えていなかった。
チョコレートには、黒か白だけではなく、ルビーチョコレートも存在することも知らなかった。
同様に、彼の色も心も理解っていなかった。
「――は、これからもずっと大切な――だから」
親愛に満ちた穏やかな微笑みを浮かべるあの人。
このうえない優しさで拒絶するように。
「――君は、何も分かっていないっ」
僕を咎めるような口調とは裏腹に、彼女は悲痛な面持ちで泣き叫んだ。
見ているこちらが苦しくなるほどに、絶望を訴えながら。
私たちの当たり前は、彼にとって、そうでなかったのだと。
僕たちの恋心は、彼女たちにとって、甘くて重い十字架になるのだと。
決して、チョコレートのように甘くない。
ルビーチョコレートの本質を知ろうともしなかった、私たちの無知を咎めるように。
***
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