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◆◆◆◆
神楽の買い物が終わり、その場で解散かと思ったけれど家まで送ってくれた。
「あの、今日はありがとうございました」
深々とお辞儀をされる。
「いえいえ、こちらこそありがとう」
最初から最後まで敬語だし礼儀正しかったな。
これが悠成の教育した成果なら本当にすごいと思う。
「次会うのは悠成さんが使っていたオフィスに行く時ですね」
「うん。そこで何か手がかりとか、進展があれば良いんだけど」
「大丈夫ですよ、きっと」
「私も根拠はないけどそう思ってる」
悲観した所で何にもならない。
もし進展しなくても状況が悪化さえしなければ良い。
「今日思ったんですけど、俺達似た者同士ですよね」
「どこが?」
「手の届かないものに憧れを持ってる所」
「ああ、それはそうかも」
私は菫、神楽は悠成にか。
「否定しないんですね」
「まあ事実だし」
「……俺には悠成さんは完璧な人に見えてました」
「三回しか会ってないけど、私にもそう見えたよ」
非の打ち所のない、完璧主義者。
「ホストを始めた時、俺はまだ高校を卒業したばかりで本当にお金がなくて着ていく服とか靴も困ってたんです。そしたら当時No.1だった悠成さんがポン、と三十万渡して……これで良い服と靴を買えって。大人に助けて貰ったのは人生で初めてでした。その時からずっとずっと憧れの人なんです」
「……」
そんなに気にかけてた神楽にさえ、何も言わずにいなくなってるのか。
「!だから、だから俺は絶対っ、」
その瞬間、唐突にグゥ~、という音が響く。
「は?」
「!」
バッとお腹を抑える神楽。
そして恥ずかしそうに口を開く。
「……すみません、お腹空いちゃいました」
「いや燃費悪!」
あんなにガッツリ食べてたのに。
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