おしぼりをどうぞ

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「「……」」 何とも言えない空気が流れる中、私は口を開く。 「良かったら、ご飯食べてく?」 「え、良いんですか?」 「うん。チャーハン位しか出来ないけど」 「チャーハン大好きです!」 「ならどうぞ」 菫以外の男の人を家に入れるの何年ぶりだろ。 絶対何も起こらないけど、ちょっとソワソワするな。 「お邪魔します」 「荷物はその辺に置いて、ゆっくりしてて。あ、手を洗うなら洗面所そっち」 「はい!」 コートを脱いで冷蔵庫の中をチェック。 ひき肉、たまご、ネギはあるから大丈夫。とりあえず神楽にお茶出してパパっと作っちゃお。 チャーハンは10分足らずで完成して、神楽の前に出す。 「わ、めちゃくちゃ美味しそうです!」 「普通のチャーハンだよ」 「何言ってるんですか。作って貰えるだけでありがたいですよ……うん、美味しいです!」 「良かった」 良い食べっぷりで見てるこっちまでお腹が膨れてきそう。私も座って自分の分のチャーハンを食べる。 「司さん、そこに飾ってある写真って学生時代のですか?」 「そうそう。高校生の時の文化祭」 「!めっちゃ綺麗です。というか隣に写ってる王子様みたいな人って南条さんですか?」 「うん。二人でミスターとミスコン出た時の」 私の出場は菫の一存みたいな物だったけれど。 「良かったらその時の話聞かせて下さいよ」 「聞いてもつまんないよ?あと長い」 「いや是非!二人の出会いとか気になるんで!」 「え~……」 出会いを話すという事は私のぼっち学生生活も話す訳で。 「お願いします!」 「……」 まあ、いいか。私がぼっちだろうと神楽には関係ない。 菫との出会いは何年経っても、昨日の事のように覚えてる。一生忘れられない。 南条菫は私にとって今でもずっとキラキラしてる存在だから。
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