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◆◆◆◆
今から十二年前。
高三、春。
クラス替えで一喜一憂してる子達を余所目に、ぼーっと席に座って教室内を見ていた。
友達は誰もいない。高一の時からずっと一人。
ありがたい事に苛められる事はなかったから一人でも困らなかった。
進路は大学に進学。うちは母子家庭だし就職するつもりだったけれど、亡くなった父の遺産がかなりあるらしく……大学は行っておきなさい、と母に強く言われて。
母自身もバリキャリで家にいる事はあまりないものの、祖父母もいるし不自由なく育ててくれて感謝しかない。
「なんっっで、今年も楓と同じクラスじゃないのよ!?三年間ずっと離れ離れなんて耐えられない!!」
廊下から悲鳴に似たような声が聞こえる。
あれは……生徒会長の南条菫だ。たぶん、彼を知らない生徒なんてこの学校で誰もいない。
圧倒的なコミュ力にリーダーシップ、成績も学年トップだし運動も出来て顔も良い。
バイセクシャルを隠す事もなく、男女ともに慕われている。
そして一緒にいるのが、幼なじみの遠野楓と村瀬雪臣。遠野君の方は父親が有名洋菓子チェーン店、トオノの社長であり村瀬君は遠野君の母方のイトコだとか。
この三人はセットで有名だ。私とは関わる事のない人達。
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