おしぼりをどうぞ

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ちょっと待ってて、とは言われたもののどれくらいかかるのかは聞いてない。 あと二十分……一時間待ったら絶対に帰る。 明日何か言われても絶対にだ。 そんな決意を固めていたら、廊下からパタパタと足音が聞こえてきた。 「遅くなってごめんなさい!ちょっと先生に捕まっちゃって」 「本当だよ、遅い」 「「……」」 何故かシーンとなる。 「なに?」 「その反応、少しだけ楓に似てるわ。私に対する冷ややかな視線も」 「意味が分からない。早く用事を済ませたいんだけど」 「そうね、行きましょ!」 胃がキリキリしている私とは真逆に南条君は上機嫌で教室を出て行く。 「何してるの!早く付いて来なさい」 「……はい」 これ、収監される囚人じゃなくて家来だ……。 そして連れて来られたのは。 「美、容室?」 私がいつも行っているチェーン店の美容室とは全然違う。敷居が高そう。 「そ。私行きつけのね」 「髪切るの?」 「司がね」 「!」 「野暮ったいのは、その髪型のせいよ。ちょっと変えるだけで可愛くなる」 「で、でもお金」 カットだけで大分かかりそうだ。手持ちでは足りないと思う。 「待たせたお詫び。私が出すから気にしないで」 私はブンブンと首を振るものの問答無用でシャンプー台に連行された。
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