83人が本棚に入れています
本棚に追加
高鳴った、のだけれども。
菫には綺麗な幼なじみがいるってすぐ分かった。この前たまたま廊下で喋っているのを見かけたけど、私と一緒にいる時とは違うすごく優しい表情をしていた。
それにとてもお似合いだと思う。
「言っておくけど、沙織とは付き合ってないわよ」
「……へ」
思わず食べていたクレープを落としそうになる。
「?気になってたんじゃないの。この前沙織の名前を出してやっぱやめた、って言うし」
「いや、どうだろ」
菫とはあれからよく一緒にいるけど、感覚は女友達に近い。今日も放課後ブラブラしていた。
「どうだろって何?」
「付き合ってても、付き合ってなくても別に私と菫の関係は変わらないなって」
「そりゃそうだけど、司……私の事好きにならないの?」
「うん」
振り向いてもらえないのが分かりきってるのに好きにはならない。
「自信なくすわ~。顔がタイプじゃないとか?」
「菫以上に綺麗な人、見た事ないよ」
「あ、……あっ、そう!なら性格?ちょっと鬱陶しい?」
「全然。慣れもあるけどハッキリしてて好きだよ」
「でも、恋愛感情はない。と?」
「あったら困るクセに」
「まあね」
菫はふ、と笑って立ち上がる。
「ねぇ、今年の文化祭のミスコンとミスターコン、私達で出ない?」
「は、ぁ?」
「付き合ってよ、私の思い出作りに」
「菫は出られるだろうけど、私は絶対無理」
何を言い出すかと思えばまた突拍子のないことを。
「無理じゃないわ。うちのクラスの芋男子に比べたらずっと司の方がイケメンよ」
「?」
うちのクラスの芋男子?
「楓が同じクラスだったら楓と出たかったけど、」
「?ちょっと待って話が見えない。菫がミスターコンに出るんだよね?」
「違うわ!私が出るのはミスコンの方!キラッキラのドレスを着るから、司にはエスコートしてもらいたいの!」
「!?」
ピシャーンと私の頭に雷が落ちる。
最初のコメントを投稿しよう!