83人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
キラキラのドレスを着て、自信に満ち溢れた菫をエスコートする地味な私。想像しただけで……。
「苦行でしかない」
頭が痛くなってくる。
「そんな事ないわよ!絶対楽しい」
「菫はね。私は表舞台に立つタイプじゃないよ」
「なら一回くらい立ちましょうよ!」
「……菫が良くてもクラスの皆が賛成しないと思う」
前より見た目に気を使うようになって、挨拶くらいはするけどそんなに話す訳じゃないし。
「なら、賛成を得られれば良いのよね?」
「菫がミスコンの方に出るのだって賛成が必要でしょ」
「それは大丈夫よ」
「?」
菫はゴソゴソとカバンからファイルを取り出す。
「実はもう司以外の皆にはアンケートを取ったの」
「!?」
い、いつの間に。
「見て!クラス全員私がミスコンに出る事、司がミスターコンに出る事に賛成してくれたわ!」
私はファイルを受け取り、恐る恐る開く。
そこには……。
『これぞ何でもアリの文化祭!賛成!』
『うちの生徒会長は相変わらずぶっ飛んでるけど、応援する』
『寺本さん、頑張って』
『南条に付き合えるのは寺本さんだけだと思う』
『賛成だけど寺本さんは大変そう……』等々。
クラスの皆からの温かい(?)コメントに溢れていた。これ……何だか憐れみの視線を向けられているような気がしないでもない。
「ちなみに先生達にも許可は既に取ってあるわ」
「外堀埋められてない?」
菫は意地が悪そうに笑う。
「私が何のために生徒会長やって、成績もトップでいるか分かる?」
「そんなの、自分の意見を通す為でしょ」
「そう。自由を得るには実力も必要なのよ」
「……なんで私なの」
わざわざ私じゃなくても、磨けば光りそうな男子は結構いると思う。
「私ね、まだ入学したての高一の時、当時から男女共にモテてたから先輩に屋上に呼び出されたのよ」
よく分からない話が始まったものの、黙って聞く。
最初のコメントを投稿しよう!