おしぼりをどうぞ

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「調子に乗ってるだの、先輩の彼女を取っただの、オネェは気持ち悪いだの色々言われてウンザリしてた時、屋上の扉が開いて」 『高校生にもなって、くだらない事してんじゃねぇよ』 「突如現れたその子は先輩達を一喝して、立ち去る訳でもなく端で弁当を食べ始めたのよ」 「……」 ダラダラと冷や汗が流れ落ちる。 忘れていたけど、そんな事もあった。中学の時無視されていた私は弱い者イジメをするような状況を看過出来なかったのだ。 「その一言がキッカケで先輩達は冷めたのかいなくなって、私はその子にお礼を言ったの。そしたら」 『呼び出されたからって、素直に行く方も馬鹿だろ』 「って。ムカついたけどその通りなのよね……後日声をかけに行ったけどずーっと我関せずの空気みたいなポジションにいるし」 ……あれ菫だったのか。顔なんて全然見てなかったから誰か認識していなかった。 「だからもし、同じクラスになったら絶対友達になってやろうって思ってたの。そしたら思いの外、私好みの良い声しててビックリした。当時は状況が状況だったから声に意識がいってなかったのよね……だから」 「だから、私の王子は司じゃないとダメよ」 「……」 ぽす、と思わず菫の胸に寄りかかる。 「本命、遠野君のクセに」 沙織ちゃんもいるクセに。 「楓は別枠!で、やるの?やらないの?」 「……やる」 この日から文化祭当日まで地獄の特訓が幕を開けた。
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