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状況を飲み込めずに、硬直していると菫が戻って来て教科書とノートをしまい始める。
「今日はもう勉強に集中出来ないから帰るわよ」
「菫って、沙織ちゃんの事どう思ってるの」
思っていた事がすんなり口から出てしまった。
でももう、聞かずにはいられない。
「今ここに来て、女の子には負けるつもりないって言われた」
「……沙織が、来たの?」
「うん。私より一緒にいなきゃいけない子なんじゃないの?」
「別に沙織とは」
「大事なんでしょ。今から追い掛ければ会えると思うからさっさと行け」
人の恋愛事情に巻き込まれるのは真っ平ごめんだ面倒くさい。
「行かない」
「何で?」
「司といたいの」
「……この人たらし。最低」
あー、ヤダヤダ。そんな事言われてうっかり好きになったらどうしてくれよう。菫は私に恋愛感情なんてないのに。
「司だって、私が沙織を追い掛けたら傷付くでしょ」
「自惚れないでよ。別に傷付かない」
現実を受け入れるだけだ。
「ああそう!でも私は司を置いて沙織を追い掛けたりしないわ!」
「あっそ!じゃあ一緒に帰るよ!」
「望むところよ!」
「「……」」
ふん!とお互い目を合わせずに帰り支度を始める。図書室から校門まで一切の会話はなく気まずい空気が流れている。
これ、別に悪い事してないし私から謝るのおかしいよね?かといって菫も悪くない。
え、やっぱり私が謝るべき?
悶々としていると菫が口を開く。
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