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「……私の一番はずっと楓でそれはこの先もきっと変わらないと思うの」
「一途って、時に残酷だよね」
沙織ちゃんはあんなに菫を想っているのに。
「沙織はもちろん、私にとって大事な子よ」
分かりきっていた事ではあるのに何故か胸がキシ、と痛む。
「でも司も大事なの」
「!」
菫はズルい。そんな言葉聞きたくない。
「私達、先月までロクに話した事もなかったよ」
「そうね……でも本当はこの二年間ずっと声をかけたかった。司にとってあの屋上での出来事は大した事じゃないかもしれない。でも私には忘れられない出来事だったの。楓以外で初めて王子様が現れたって思ったのよ」
どう考えても私は王子ってガラではない。
「何度も声をかけようと思ったけどあんたの話しかけるなオーラが凄くて躊躇してたのよね」
「それは自覚あるかも」
菫はそっと私の手を取る。
「?」
「ずっと、ずっと友達になりたかった」
「……」
そして見た事のない、少し照れた表情で笑ったんだ。私はその手を握り返す。
「もう友達でしょ」
「っ、そうよ!私達の友情は永遠よ!」
「大袈裟~。まだ一ヶ月くらいだけど?」
「この先永遠なの!」
「はいはい」
この日、繋いだ手を離すことなく帰り道を歩いた。いつも通り学校の事、昨日観たドラマの事、次の遊びに行く予定を話しながら。
繋いだ手は温かかった。
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