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◆◆◆◆
十月、文化祭当日。
私は全く着慣れない王子の衣装に包まれていた。鏡の前に立ち、変な所がないか確認する。うーん……仮縫いの時点でも思ったけど七五三かな?
このあと文化祭のオープニングでミスとミスターコンの出場者は登壇して自己紹介をしなければいけない。結果は全校生徒の投票と一般のお客さんの投票を合わせた物が明日のステージで発表される。
つまりは明日もこの衣装を着てステージに立たなければいけないのだ。その事実に胃痛が止まらないけれどここまで来たらやるしかない。
わざわざ衣装をオーダーメイドで準備してくれた菫の為にもしっかりやらねば。
「あら、素敵な王子がいる」
「!」
カツカツとヒラヒラフリフリのドレスを着た菫が私の隣に立つ。お世辞ではなく滅茶苦茶綺麗だ。絶対に一番だと思う。
「素敵な王子なのに、何よその自信なさげな表情は」
「自信なんてないよ。菫のオマケみたいなものだし」
「オマケじゃない。ステージに上がったら全員主役!私の王子がオマケなわけないでしょ!」
「菫、」
このプラス思考に何度背中を押してもらったことか。
「大丈夫よ。それに楽しまなきゃ勿体ない」
「……うん。私ちゃんとカッコいいかな?」
「あったり前よ!」
「菫も綺麗。間違いなく誰よりも」
「あ、あったり前よ!」
「「……」」
お互い笑い合ってステージの袖へと向かう。
大丈夫。私の隣に立つのは世界で一番綺麗な人なんだから。
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