おしぼりをどうぞ

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ステージでの自己紹介を何とか終えて更衣室へと向かう途中、菫はワッと女の子達に囲まれて撮影会が始まってしまった。 相変わらず人気者だな。着替える為にその場を後にしようと思った時。 「っ、寺本さん!ちょっとお時間良いですか!」 「?」 同じクラスの……誰だっけ。 「今?」 コクコクと勢い良く頷かれる。 「この格好でも大丈夫?」 「問題ないです!」 名前、名前がえーと……確か林君?だっけ。 林君(多分)の後に付いて行くと人気のない校舎裏に着いた。 「……」 これは人間関係に無頓着な私でも流石に分かる。告白、というもののシチュエーションでは? 「あの!実は去年同じクラスになった時から寺本さんの事良いな、って思ってて」 え、同じクラスだったっけ?全然覚えてない。 いやでもこんな顔いたような。 「寺本さんは忘れてるかもしれないけど、美術の時間にカッターで指を切った俺にティッシュをくれたんです。その時から気になり始めて」 な、なんだそのエピソード。そして林君チョロくないか? 「良かったら、付き合ってもらえませんか!」 「!」 人生で、初めて告白された。 林君の事は全然知らないけど、この先私の事を好きになってくれる人なんて現れるだろうか。 良い人そうだしとりあえず付き合ってみるのもアリ? 嫌な事があれば別れれば良いし。 「えっと、じゃあ」 よろしくお願いします、で良いのかな。 『司』 「じゃ、あ」 何故か菫の顔が頭をよぎる。 別に誰かと付き合うのに菫の許可なんていらない。私の自由だ。 なのに。 『……あと、声が良いわ』 菫の事ばかり、思い浮かんでくる。
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