おしぼりをどうぞ

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翌日。 昨日わんわん泣いたせいか目がとんでもない事になっていた。それを何とか冷やして見れる顔にしていたら時間は結構ギリギリ。 今日も文化祭のオープニングイベントで意気込みを一言言わなきゃいけない……なのに更衣室で菫に手渡された衣装を見ると目が点になった。 「なに、これ」 それは昨日着た王子の衣装ではなく、綺麗な……とても綺麗な水色のドレスがあった。 それと一緒にメッセージカードが入っている事に気付く。 『これは今日まで頑張ってくれた司に私からサプライズ。本当にありがとう、最高の思い出作りましょ!……菫』 「……」 ポタポタ、ポタポタ。 メッセージカードに水滴が滲む。私は思いっきり鼻をかんでパン!と頬を強く叩いた。 泣いてる場合じゃない。ここまでしてくれた菫の気持ちに応えたい。その時コンコン、と更衣室をノックする音が響く。 「えっと、同じクラスの川野(かわの)です!南条君に頼まれて寺本さんの髪とメイクやりに来ました!」 「!」 本当に泣いてる場合じゃない。急いで着替えなきゃ。初めて袖を通すのにドレスのサイズはピッタリ。 髪とメイクもしてもらった私は、まるで魔法にかけられたみたいだった。
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