おしぼりをどうぞ

31/31

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
◆◆◆◆ 現在 「……いや、それ南条さんの事めちゃくちゃ好きじゃないですか」 はー、と神楽が息をつく。 「そりゃ好きだけど、恋愛感情が芽生える前に振られた感じだからね」 その後菫は沙織ちゃんとくっついたり離れたり、別の人とも付き合ってたし。 「良いんですか、このままで」 「お互い今以上の関係求めてないから」 「俺は男女の友情はないと思ってるタイプなので、見ててもどかしくなりますよ。というかとりあえず付き合ってみれば良かったのでは?」 「そのとりあえずが当時は出来なかった。付き合ったとしても一番じゃないのは嫌だから」 自分で言うのもなんだけど私も大概拗らせてるな。 「それは分かります。でも南条さんて案外優柔不断ですね」 「……それ、菫の前で絶対言わないでね」 「言いません。でも大事だから手を出さないって意味分からないなって」 「……」 私はすっかり冷めてしまったチャーハンを口に運ぶ。 「俺だったら、好きならすぐに手を出しちゃいますけど」 「その感覚は分かりやすくて良いと思う」 「ですよね。まあ南条さんは俺と違って色んな事を小難しく考えてそうですし」 「頭良いから」 回転も早いし、対応力もあるし、菫も悠成と同じで何やっても成功しそうなタイプだ。 「……さてと。チャーハン美味しかったです、ご馳走様でした。そろそろ帰ります」 「あ、うん」 「洗い物くらいさせて下さい」 「いやいや、少ししかないから大丈夫」 「でも、」 「いいっていいって」 少し強引に玄関まで神楽の背を押す。 「今度は俺の手料理も食べに来て下さい。こう見えて自炊するんですよ」 「……気が向いたらね」 冗談なのか本気なのか分からないな。 「ぜひ。良ければ南条さんも一緒に」 「うん」 神楽は最後まで礼儀正しく、お辞儀をして帰って行った。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加