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◆◆◆◆
現在
「……いや、それ南条さんの事めちゃくちゃ好きじゃないですか」
はー、と神楽が息をつく。
「そりゃ好きだけど、恋愛感情が芽生える前に振られた感じだからね」
その後菫は沙織ちゃんとくっついたり離れたり、別の人とも付き合ってたし。
「良いんですか、このままで」
「お互い今以上の関係求めてないから」
「俺は男女の友情はないと思ってるタイプなので、見ててもどかしくなりますよ。というかとりあえず付き合ってみれば良かったのでは?」
「そのとりあえずが当時は出来なかった。付き合ったとしても一番じゃないのは嫌だから」
自分で言うのもなんだけど私も大概拗らせてるな。
「それは分かります。でも南条さんて案外優柔不断ですね」
「……それ、菫の前で絶対言わないでね」
「言いません。でも大事だから手を出さないって意味分からないなって」
「……」
私はすっかり冷めてしまったチャーハンを口に運ぶ。
「俺だったら、好きならすぐに手を出しちゃいますけど」
「その感覚は分かりやすくて良いと思う」
「ですよね。まあ南条さんは俺と違って色んな事を小難しく考えてそうですし」
「頭良いから」
回転も早いし、対応力もあるし、菫も悠成と同じで何やっても成功しそうなタイプだ。
「……さてと。チャーハン美味しかったです、ご馳走様でした。そろそろ帰ります」
「あ、うん」
「洗い物くらいさせて下さい」
「いやいや、少ししかないから大丈夫」
「でも、」
「いいっていいって」
少し強引に玄関まで神楽の背を押す。
「今度は俺の手料理も食べに来て下さい。こう見えて自炊するんですよ」
「……気が向いたらね」
冗談なのか本気なのか分からないな。
「ぜひ。良ければ南条さんも一緒に」
「うん」
神楽は最後まで礼儀正しく、お辞儀をして帰って行った。
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