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私の目の前には、いかにもお金持ちが住んでそうな立派なマンションがそびえ立つ……やっぱりホストクラブの会長ともなればめちゃくちゃお金持ってるんだろうな。
今日は私、菫、神楽の三人で前回もう一度調べると決めたマンションに来ていた。
「ここって今もオフィスとして使ってるの?」
「はい、悠成さんがいた時から数人の幹部達と使っていました。全員会長の側近クラスです。会長にはどうしても悠成さんの手がかりを見付けたいので、もう一度だけオフィスに入らせて下さいって頼み込みました」
「え、それで良いよってなったの?」
「はい。土下座したので」
「バカねぇ。もっと適当に言って入れなかったの?」
菫は深い深いため息をつく。
「会長には嘘をつきたくなかったので。悠成さん同様にとても尊敬出来る方なんです」
やっぱり若いなぁ。でもこんなに真っ直ぐな後輩がいたら可愛がるの分かる。
「……そう。さっさと行くわよ」
「あ、あと俺、南条さんに聞きたい事があって」
「?何よ」
「南条さんて、お仕事何されてるんですか?」
「!」
こ、このタイミングでそれ聞く?これからマンションに入って色々調べようって時に。
「小説家。他にも雑誌にコラムを書いたり色々やってる」
「あー、大分予想が外れました」
ん?神楽の反応薄くない?いやホストだと色んな職業の人を接客するからかな。そのせい?
「何だと思ったの?」
「通訳か現地コーディネーター辺りかと」
「通訳は知り合いに頼まれてちょっとだけバイトならした事あるわよ」
「見た目通りハイスペックですね。ペンネームをお聞きしても?」
「秘密。性別年齢隠してるから」
「もっと仲良くなったら教えてくれます?」
「ふふ、百年早いわ」
「……」
何だか、普通に会話してない?
これが売れっ子ホストの成せる技?空気読めてないようで読めてるのか……?
「ほら、さっさと部屋に行くわよ。時間は有限なんだから」
菫の後に続きマンションのエントランスに入り、三人でエレベーターに乗り込む。
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