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その後他の部屋も探したけれど何か気になるものは見付からなかった。
「……こっちもダメね。データは完全に消去されてて短時間での復元は難しそう。隣の共用パソコンに従業員リストは入ってたけど悠成の情報はない。徹底してるわ」
「じゃあもう本当に手詰まりかな」
大人しくクリスマスを待つ以外ないかも。
「まだ引き下がるのは早いわ」
「?」
「全貌を知ってそうな人がいるじゃない」
全貌?
「もしかして、JINの会長の事を言ってる?」
「そうよ。会長のパソコンをハッキング出来れば」
「ごめん、それは流石に反対。万が一バレたら捕まるよ」
菫にこれ以上のリスクを負わせるのは看過出来ない。
「私はそんなヘマしないわ。でも神楽に習って直談判する事にした」
「え?俺ですか?」
「会長のメールアドレスは分かったからコンタクトを取ってみる。そっちの方がハッキングするより手っ取り早いわ」
「!」
「でも俺にさえ会長は何も話してくれなかったのに、」
「馬鹿ね、権力持ってる相手にはある程度やり方があるのよ」
それこそ捕まらないか心配になるけど、菫は上手くやるのだろう。
「さて。今日はもうここまでね、解散しましょ。司、行くわよ」
「あ、うん。神楽は?」
「俺はこのまま店に出勤するので、戸締まりだけして行きます」
「なら店の近くまで送るわよ。車で来てるから」
「お気遣いありがとうございます。この後姫と同伴なので大丈夫です」
「そう、売れっ子は大変ね」
「仕事頑張って。また連絡するから」
「はい、ありがとうございます」
「……」
オフィスを後にして菫と一緒にエレベーターに乗り込んだ。
「何だか随分、神楽と仲良くなってない?」
「そう?」
「ああいうの、タイプなの?」
「タイプっていうか一生懸命で可愛いよね」
「……別に、可愛くないわよ。ホストだし気をつけなさいよ」
「ホストは年内で上がるんだってさ。その後は海外行って、通信制の大学通って母方の実家の農業継ぐらしい」
「ふーん」
それから菫は黙ってしまい、チン、とエレベーターは一階についた。
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