お煙草はお吸いになられますか?

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私?沙織ちゃんじゃなくて? 頭の中が混乱してくる。何も言えない私の手を引いて菫は歩き出した。 「早く出ないと。映画館に迷惑よ」 「あ、うん」 そして来た時と同じように車に乗り込んだ。 菫も私も黙ったまま。変な空気が流れている。 いや、黙ったままでいられるか。 「「あのさ」」 「「!」」 二人同時に声を発してしまい、またしても変な空気が流れる。でも聞かずにはいられない。 「私に対する、気持ちの決着ってどういうこと?」 「この件が片付いたらきちんと話すわ」 「菫」 「ん?」 ハンドルに手をかけた菫の肩をグッと掴む。 「ふざっっけんな」 「……」 「ハッキリしろ!そこまで言って逃げるのは許さない」 菫は目を見開いて固まる。 「今言っても、後言っても気持ちは変わらないんでしょ?モヤモヤするから言え」 雰囲気とかタイミングなんて知ったことか。 「……ふふ」 「なに笑ってんの」 「いや、あんた昔から本当にたまーにキレるわよね」 「そんなこと、あるかも」 突然言いたい事が降ってくるというかなんというか。 「まあ、確かに後回しなんて私らしくないか」 「そうだよ」 菫は笑って私に手を伸ばしぎゅ、と抱きしめる。 「好きよ。大好き。私のものになって」
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