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「じゃあ、菫も手貸して」
「ん」
今度は私が菫の手を取って、リングを小指にはめる。昔から手荒れなんて無縁の綺麗な手だ。
「菫さ」
「何よ」
「沙織ちゃんとは最近どうなってるの」
「沙織?別に何とも」
沙織、こと宮野沙織ちゃんは菫の幼なじみで菫とはくっついたり離れたりを何度も繰り返してる。
同じ高校だったけどクラスは一度も一緒になっていないからあまり会話をした事がない。
菫と並ぶと美男美女でとてもお似合いなのだが、沙織ちゃんは中々に気が強くて有名だった。
「会いに行かないの?」
「予定が合えばね」
「そんな事言ってると他の男に取られちゃうんだから」
「ないない、ないわよ」
「ふーん」
学生時代からこの変な自信があるんだよね。
沙織ちゃんは美人だし、引く手数多だけどな。一個上の一番イケメンな先輩と付き合ってた事もある。
「それより司は?何か良い出会いないの?」
「全くない」
メッセージカードの君が本当に迎えに来て欲しいくらいだ。
「ま!私みたいな超美人と一緒にいたらそこら辺の男なんて霞むわよねぇ」
「あ、でもこの間スーパーの常連さんからご飯食べに来ない?って誘われた」
確か今年七十って言ってたな、常連の林さん。うちのスーパーによく買い物に来てくれる。
「はあ!?どこの馬の骨よそれ!」
「素敵な人だよ?」
書道の先生で、いつも身なりがきちんとしてる。ご飯云々は林さんの奥さんが居酒屋をやっているから、是非食べに来てと言われたのだ。嘘はついていない。
「私よりも?」
「うん」
「!?」
ピシャーンと雷に打たれたように菫が固まった。
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